Integrating Japanese Eastern medicine with Western medicine.

多くの人にとって、長時間座って作業をすることは、デスクワークや家事などのため、避けることはできません。実際、私たちのクリニックにも、デスクワークの影響による腰痛の相談でいらっしゃる患者様は多くいらっしゃいます。今回は、長時間同じ姿勢で作業をしていて、その後2週間痛みが引かなかった患者さんについて紹介したいと思います。

患者さんの状況

患者さんは専業主婦(50代女性)の方で、3時間ほどパソコンを使って作業をした後、脚を動かすと左の脚の付け根に痛みが出てしまっていました。ご本人のお話によると、座っていた時に、左の骨盤が前に出て、右の肘置きに寄りかかりながら作業をしていたとのことでした。可動域や筋肉の硬さ、筋力などを調べたところ、左股関節の大腰筋という筋肉に力を入れて膝を持ち上げると、股関節痛みが出ることがわかりました。また、骨盤の動きを調べた結果、膝を持ち上げる動作の時に、過度に大腰筋を使って骨盤を安定させる腹筋をうまく使えていないことがわかりました。

患者さんの姿勢

治療

原因としては、左右非対称な姿勢で、大腰筋が長時間ストレッチされ、左脚を動かす機能が一時的に落ちてしまった状態であると考えられました。治療では、まずは大腰筋に負担がかからないように、その周りの柔軟性をあげて、動かした時にあまり大腰筋に負担がかからないようにしました。その後痛みは半分程度まで減りましたが、まだ完全に痛みは取りきれていませんでした。次に、腹筋をうまく使えていなかったことで、骨盤が不安定になっていました。そこで、骨盤を安定させて股関節を動かすような練習をしました。座った姿勢で膝を上に持ち上げるとき、正常では骨盤はやや後方に倒れます。この動きが出ないと、股関節が過度に曲がってしまい、股関節の付け根の筋肉が挟まれてしまいます。骨盤の動きを練習した後、膝を持ち上げる運動をしてもらうと、痛みはなくなりました。

大腰筋とは大腿骨と背骨をつないでいる筋肉で、直立姿勢や太ももを引き上げるときに働くものです


正常な骨盤の姿勢(左)、患者の症例(右)

治療後

筋肉周囲の柔軟性向上と、骨盤の動きの練習の後、膝を持ち上げるときの痛みはなくなりました。正しい座る姿勢と股関節、骨盤周りの柔軟性、安定性を上げるエクササイズを指導し、セッションを終了しました。