Integrating Japanese Eastern medicine with Western medicine.

アスリートにとって、運動中や運動後のハムストリングスの不快感はとても多い症状です。ハムストリングスの痛みや不快感は、しばしば過度の運動や不適切なトレーニング方法、または身体の誤った使い方によって引き起こされることがあります。今回は、ランニング中にハムストリングスに痛みを抱える患者さんのケースを紹介します。

患者さんの状況

今回の患者さん(30代男性)は、フルマラソンを完走した後から2-3kmほど走るとハムストリングスの腱に痛みが走るようになりました。原因は、股関節と骨盤の連動がうまくいかず、左足が大きく前に出るオーバーストライドであったことが挙げられます。この走り方により、ハムストリングスに過度な負担がかかり、その状態で走り続けることによって、ハムストリングスの腱に炎症が起こってしまいました。さらに、足首が固く、足の中央に上手く体重を乗せられないことも、ハムストリングスに負担がかかった原因だと考えられます。

オーバーストライド(写真左)、通常(写真右)
片足立ちをすると膝が内側に入る

治療法

治療では、まず痛みの原因を探るために、ランニング時のフォームチェックをしました。動きを確認後、股関節を上手く使えるようにするためにPNF(Proprioceptive Neuromuscular Facilitation)を活用し、骨盤を安定させながら股関節を使えるように力の入れ方を練習しました。PNFとは、筋肉を運動の中で効率的に使えるようにするための理学療法の手技で、ある一定の運動方向(パターン)の中で動かすことによって、身体のコントロールを向上させることが期待されます。さらに、股関節マニュアルセラピーも行い、股関節の可動性を出していくよう努めました。

手術後

治療後、3セッション目には股関節の柔軟性はほとんど左右差はなく、腱の痛みも減少しました。しかし、腱の痛み自体は減っていても、腱組織は弱いまま(強くなったわけではない)ので、現在は痛みの再発防止、さらなるパフォーマンスの向上のためにハムストリングスや股関節周りの筋力向上、体幹の安定性向上、また足首の柔軟性向上にも取り組んでいます。