
肩の痛みは多くの方が抱えており、特に、何か月も続くと、日常生活にも大きな支障が出てきます。今回は、肩をひねったことをきっかけに左肩の痛みが始まり、6か月以上痛みが続いていた40代の男性のケースを紹介します。治療前は、ジャケットを着るといった簡単な動作でも痛みが出てしまい、日常生活に大きな不便を感じていました。
患者さんの状態と主な訴え
- 40代・男性
- 左肩の痛み(肩をひねった後から発症)
- 痛みの期間:6か月以上
- 痛みが出る動作:
- 肩の屈曲(前に腕を上げる動き)
- 肩の外転(横から腕を上げる動き)※一番痛く、制限が強い
- 水平内転(腕を体の前でクロスする動き)
- 日常生活での問題:ジャケットを着る動作が痛くてできない
初回評価(評価でわかったこと)
- 肩の屈曲可動域:左右差は大きくないが、左は首や体幹で代償して動かしている
- 肩の外転:45度未満しか上がらず、強い痛みあり
- 背中に手を回す動作:やや制限あり、代償動作を伴う
- 水平内転:痛みと可動域制限あり



これらの動きの評価と痛みの部位から、**主な痛みの原因は上腕二頭筋腱(いわゆるバイセップス腱)**と考えました。
さらに、次のような問題も見られました。
- 肩峰下スペース(肩の中のスペース)の狭小化
- 肩周囲の筋肉の強い緊張
- 肩の動きの乱れと代償動作の増加
まずは「肩」ではなく、肋骨と背骨からアプローチ
肩の痛みが長期間続くと、体は無意識のうちにかばう動きを覚えてしまいます。
この患者さんも、
- 首(頚椎)の緊張
- 胸椎や肋骨の動きの硬さ
- 肩を動かすときの不自然な動作パターン
がはっきり出ていました。
そこで、いきなり痛い肩を触るのではなく、まずは
- 背中の中央あたりの胸椎の動き
- 上部〜下部肋骨の横方向の動き
- 首(頚椎)の可動性
を改善する治療から始めました。
すると、まだ肩を直接触っていない段階でも、肩の動きが少しずつ改善してきました。
これは、肩の動きが「背骨や肋骨の動き」と密接に関係していることをよく示しています。
軟部組織(筋肉・筋膜)と肩甲骨の動きの改善
次に、痛みの原因部位である上腕二頭筋腱周囲を中心に、硬くなっている筋肉や筋膜の調整を行いました。
治療した主な筋肉:
- 大胸筋・小胸筋
- 僧帽筋上部
- 肩甲挙筋
- 肩の後面の筋肉(棘下筋・大円筋・小円筋など)
- 広背筋
- 前鋸筋
同時に、肩甲骨の動きも改善していきました。
肩甲骨がうまく動かないと、肩関節には余計な負担がかかり、痛みがなかなか取れません。
肩関節そのものへのアプローチ
筋肉や肩甲骨の動きが改善した後、最後に肩関節自体の調整を行いました。
評価でわかっていたこと:
- 肩峰下スペースが狭くなっている
- 上腕骨頭が前方にずれている
そこで、
- 関節モビライゼーションで肩峰下スペースを広げる
- 上腕骨頭を関節の中央(関節窩)に戻す調整
を行いました。
さらに、**PNF(固有受容性神経筋促通法)**などのアクティブな運動を使って、
「改善した可動域を体が自分でコントロールできる状態」にしていきました。
ショックウェーブ(RPW)とMLSレーザー治療
仕上げとして、
- ラジアル・ショックウェーブ(RPW)
- MLSレーザー治療
を併用し、痛みの軽減と組織の回復をさらに促しました。
これらは、
- 痛みの軽減
- 組織の回復促進
- 慢性的に過敏になった組織の鎮静
にとても有効です。
治療後の変化
治療前:
- 痛みで腕が45度以上上がらない状態
治療後:
- 90度以上まで挙上可能に
- 痛み・可動域ともに大きく改善
最後に、
- アイシングの方法
- 寝るときのポジション(肩に負担をかけない姿勢)
を指導して、この日のセッションを終了しました。


まとめ:肩の痛みは「肩だけ」の問題ではない
このケースは、効果的な肩の治療には次のような要素が重要であることを示しています。
- 肋骨・胸椎の動き
- 首の動き
- 肩甲骨の動き
- 筋肉・筋膜の柔軟性
- 肩関節のアライメント
- そして必要に応じて、ショックウェーブやMLSレーザーといった機器治療