
顎関節症(TMJ)は、歯科領域の問題として捉えられることが多く、「噛み合わせ」や「マウスピース」で解決すると考えられがちです。しかし、特にアスリートにおいては、顎関節の問題は顎だけの問題ではありません。
顎関節の機能は、首・姿勢・体幹、そして全身の運動と密接なつながりがあります。全身に目をむけることをしないと、顎の痛みが改善しにくいだけでなく、スポーツパフォーマンスの低下につながることもあります。
顎関節とスポーツパフォーマンスの関係
顎関節は、身体の姿勢制御や神経筋コントロールの一部として機能しています。
臨床経験や研究から、以下のことが分かっています。
- 噛む位置や噛みしめは全身の筋活動に影響する
- 噛む力は筋力発揮や安定性と関連する
- 過剰な噛みしめは首や肩の緊張を高める

つまり、顎関節の問題は局所にとどまらず、走り・スイング・バランス・呼吸など、スポーツ動作全体に影響を及ぼします。
顎関節と首・姿勢の深い関係
顎関節と上位頸椎(C1・C2)は、機能的に強く連動しています。
顎関節の動きや位置に制限が生じると、
- 上位頸椎の可動性が低下する
- 頸部や頭部の筋緊張が増す
- 頭部・体幹の姿勢が変化する
その結果、
- 慢性的な首のこり
- 頭痛
- 背骨全体の動きの低下
- スポーツパフォーマンスの低下
につながることがあります。アスリートにとっては、わずかな制限でも大きな影響となります。

理学療法士ができること
理学療法士は、顎関節を全身の運動機能の一部として評価・治療します。
1. 評価(アセスメント)
- 顎関節の動きと左右差
- 上位頸椎・頸椎の可動性
- 姿勢(立位・座位・競技姿勢)
- 呼吸と体幹の安定性
2. 徒手療法
- 顎関節のモビライゼーション
- 顎関節周囲筋・顔面筋の軟部組織治療
- 上位頸椎への徒手アプローチ
- 過剰な筋緊張の軽減
3. 神経筋再教育
- 顎・首・体幹の協調性の改善
- 常に噛みしめないためのコントロール練習
- 動作中の左右差・タイミングの修正
4. トレーニング
- 深部頸部筋トレーニング
- 姿勢制御エクササイズ
- スポーツ動作につながる機能的トレーニング
目的は、痛みを取ることだけでなく、効率の良い動きとパフォーマンスの向上です。
顎関節の痛みは「パフォーマンスの問題」
アスリートにとって、顎関節の機能は非常に大切なものです。
- 顎の痛みやクリック音
- 噛みしめや関連する首の張り
- トレーニング中・後の頭痛
- スポーツ中に力みやすい感覚
これらがある場合、顎関節が全身の動きに影響している可能性があります。
全身から顎関節
顎関節症は、顎だけを治療しても改善しないケースが多くあります。
顎関節・上位頸椎・姿勢・筋の協調性を一体として捉えることで、理学療法はより本質的なアプローチが可能になります。
痛みの改善だけでなく、 「動きが変わる」「力が伝わる」「パフォーマンスが上がる」。これを実現できることが、理学療法治療のいいところです。