Integrating Japanese Eastern medicine with Western medicine.

ランナーにも多い逆流性食道炎(GERD)?

GERD(Gastroesophageal Reflux Disease/逆流性食道炎)は、胃酸が食道へ逆流することで、胸やけ、不快感、吐き気、呼吸のしづらさなどを引き起こす状態です。一般的には消化器系の問題として認識されていますが、ランナーや運動習慣のある方にも多く見られます

特にランナーでは、

  • ランニング中の上下動による腹圧変化
  • 食後の運動
  • 食後の睡眠
  • 呼吸パターンの乱れ
  • ストレスによる自律神経の影響

などが重なり、症状が悪化することがあります。

多くの場合、GERDは薬や食事指導で管理されますが、身体の使い方や神経系の状態が症状に影響しているケースも少なくありません。

理学療法でGERDにアプローチできる理由

GERDは単なる「胃の問題」ではなく、以下の要素と深く関係しています。

  • 横隔膜の機能低下(呼吸と腹圧コントロール)
  • 自律神経の乱れ(特に交感神経優位)
  • 頸部・胸郭の過緊張
  • 内臓の可動性低下

理学療法では、内臓・神経・筋骨格系を統合的に評価・治療することで、症状の改善を目指します。

逆流性食道炎の症状に影響を与える要因

横隔膜の機能

自律神経バランス

内臓の可動性

姿勢

ケーススタディ:GERDの症状を抱える女性ランナー

初期評価

この患者さんはGERD症状を抱えるランナーで、

  • 仰向けで寝ると逆流感が強く、フラットな姿勢で眠れない
  • 呼吸が浅く、常に胸や首周りに力が入っている
  • 食後のランニング中に吐き気を感じる

といった問題を訴えていました。ランニングでは、脚は疲れていないのに、胃の不快感によりペースダウンしなければいけないことが、とてもストレスに感じる、と訴えていました。

評価の結果、

  • 横隔膜の可動性低下
  • 迷走神経機能の低下を示唆する所見
  • 頸部〜頭蓋、上部体幹の過緊張

が認められ、交感神経が過剰に優位な状態であると考えられました。

治療アプローチ①:内臓マニピュレーション

まず行ったのは、内臓マニピュレーションです。

胃や食道周囲の組織の緊張を緩和し、内臓の滑走性・可動性を改善することで、

  • 横隔膜との協調性向上
  • 胃食道接合部へのストレス軽減

を目的としました。

治療アプローチ②:迷走神経へのアプローチ

GERD症状には自律神経、特に**迷走神経(副交感神経)**の働きが重要です。

頸部・頭蓋周囲への穏やかな徒手介入を行い、

  • 副交感神経の活性化
  • 過剰な交感神経活動の抑制

を促しました。

治療アプローチ③:横隔膜呼吸トレーニング

治療と並行して、横隔膜呼吸(Diaphragmatic Breathing)の再教育を行いました。

これにより、

  • 腹圧の適切なコントロール
  • 呼吸効率の向上
  • ランニング中の内臓ストレス軽減

が期待できます。

治療アプローチ④:頸部・頭蓋・上部体幹への徒手療法

この患者さんは、慢性的なストレスにより首・肩・胸郭上部に強い緊張がありました。

そのため、

  • 頸椎・頭蓋へのマニュアルセラピー
  • 上部胸郭の可動性改善

を行い、神経系がリラックスできる身体環境を整えました。

治療結果

数回のセッション後、

  • フラットな姿勢で問題なく眠れるようになった
  • 呼吸が楽になり、日常生活での緊張感が減少
  • 食後のランニングでも吐き気を感じにくくなった
  • ランニング中の感覚が改善し、パフォーマンスも向上

といった明確な変化が見られました。

ランナーのGERDに対する理学療法

GERDに対する理学療法は、薬や食事管理などの治療に加えて、とても効果的な治療法です。なぜ症状が出やすい身体状態になっているのかを評価し、神経・呼吸・内臓・姿勢を統合的に整えることで、より根本的な改善が期待できます。

ランニング中の不快感や、睡眠姿勢での逆流症状に悩んでいる方は、身体の使い方・神経系の状態にも目を向けてみてください。