Integrating Japanese Eastern medicine with Western medicine.

はじめに

半月板損傷は、膝の外傷や加齢による変性によってよく起こるケガの一つです。多くの急性損傷は手術や標準的なリハビリで対応されます。慢性的なケースでは、長年にわたって機能制限が残ることがあります。今回は、半月板損傷の影響で膝の可動域が制限されているケースをご紹介します。

主な訴えは、膝の曲げにくさ(屈曲制限)と、しゃがむ・踏み込むといった動作が困難というものでした。治療では、機能的徒手療法(Functional Manual Therapy, FMT)に加え、神経筋再教育や運動制御トレーニングを組み合わせることで、関節可動域の改善と動作の安定性の向上を図ることができました。

治療デモンストレーションビデオ

ケースの背景

患者さんは社会人サッカー選手で、10年以上前の半月板損傷以降、膝の動きにくさを感じていました。手術は受けておらず、急性期の痛みは消失していたものの、膝の屈曲制限のために深くしゃがむ・正座・運動時の負荷動作が困難でした。また、階段昇降長時間の立位でも違和感があるとのことでした。

初回評価では、膝関節そのものに明らかな可動域制限があ離ました。また、股関節や足関節からの代償動作、さらには体幹や下肢の運動制御の低下も確認できました。こうした慢性膝関節障害では、関節周囲のバランスの崩れが他の部位にも広がっていることがあります。

評価と所見

身体評価では、膝屈曲の自動・他動ともに著しい制限が見られました。**膝蓋骨(パテラ)**の可動性低下、脛骨・腓骨の滑走性の減少と位置のズレも確認され、これらが膝の動作効率を妨げ、荷重時の異常な関節負荷を生じさせていました。

さらに、足関節と股関節の可動性と安定性の低下も明らかでした。しゃがみ動作片脚立ちなどの機能的動作では、体幹や骨盤の代償(過剰な前傾や左右へのブレ)が目立ちました。

このように、膝の問題は単独で起こるわけではなく、周囲の関節や体幹の連動性も深く関与していることが改めて確認されました。

治療アプローチ

治療では、徒手療法による関節可動性の改善と、神経‐筋の再教育運動制御のトレーニングを組み合わせて行いました。この機能的徒手療法(FMT)により、関節の動きや神経筋の連動、全身の動作効率の改善を目指します。

膝の関節モビリゼーションでは、膝蓋骨、脛骨、腓骨、大腿骨それぞれに対して治療を行いました。膝屈曲の可動域が回復してきた段階で、機能的な体勢でのトレーニングも行いました。

荷重位での動作制御向上のため、PNF(固有受容性神経筋促通法)を取り入れたランジ動作を導入しました。これにより、膝・股関節周囲筋の活性化と協調性の改善が期待できます。単純なランジから始めて、徐々により動的なステップ動作へと発展させていきました。

また、片脚動作時の安定性を高めるために、ウェイトを使ったトレーニングを実施しました。これにより、片脚支持中の膝へのストレスを軽減しつつ、軸の安定性を強化できます。ステップダウン、片脚デッドリフト、バランスボードでの抵抗トレーニングなどを行いました。

さらに、股関節・足関節の機能改善も重要なポイントです。足関節の背屈制限や股関節の回旋・伸展制限は膝への代償動作を招きやすいため、FMTを使って可動域の改善と筋出力の最適化を図りました。

最後に、スクワット動作の質を高めるための体幹と股関節の機能トレーニングも加えました。体幹の安定性や骨盤の正しい配列は、下肢全体の動作に大きく影響を与えます。

治療結果

複数回の治療を通じて、患者さんは膝の屈曲可動域に明らかな改善が見られました。以前は困難だった階段昇降や深くしゃがむ動作も、よりスムーズに行えるようになりました。さらに、患者さん自身も「動作中の膝のコントロール感が明らかに変わった」と感じており、下肢全体にわたる感覚と動きの質が改善されていることを実感されていました。

治療前

治療後

まとめ

今回のケースは、慢性的な半月板損傷の治療についてまとめました。痛みや硬さの部位だけを診るのではなく、動作全体の問題を捉えて治療を行いました。FMTは、慢性疾患に対する治療においてとても有効です

さいごに

過去の膝のケガが長年にわたって機能を制限している方でも、正しい評価と包括的なアプローチによって新たな改善の可能性を引き出すことができます。手術だけが選択肢ではありません。もし長引く膝の違和感や制限にお悩みの方がいらっしゃれば、ぜひ一度ご相談ください。